メルマガ

ミューテックのメルマガ(毎月第2水曜日配信)の抜粋を掲載いたします。

2024/3/13【ねえスーパーで特売のペットボトル電気買って来て?】(野島)
今月のタイトルも良いですね、なんか読んで見たくなりませんか?今月は液体電池 のお話です

弊社の入居している「さがみはら産業創造センタSIC」には、様々の研究企業が入居 しています。昨年10月のメルマガでは、「軽い・曲がる・割れない」太陽電池(ペ ロブスカイト型)のPXP社を取り上げさせて頂きました。が、また凄い企業に出会っ てしまいました。それが、液体電池を研究されているARM Technogies社です。ホー ムページを見ると、人類をエネルギー問題から解放して、世界の平和を目指すと、 凄い、志高いです!( https://armtechnologies.jp/ )

どんなものかというと。液体電池で液体を充電します。その液体を取り出し容器に 入れて運びます。電気を点けたいときは、その液体を液体電池に注ぎます、あら電 気が点きました。使い終わったら、また充電します。凄くないですか?

トヨタのミライて燃料電池車知ってますか?あれ水素が燃料で、空気中の酸素と反 応させて電気を取り出す仕組みです、これも液体電池の一種ですね。他にも、レド ックスフロー電池と言って、ある液体に電気を蓄える技術があります。水素は少し 危険なので安全管理が必要ですね、レドックス液体は安全なんですが、おなじみの リチウムイオン電池の10分の1しか電気を蓄えられないそうです。リチウム電池は、 1リットルで300Wの電灯を1時間点けられる(300Wh/L)そうです。レッドックス電池 は液体自体に充電しますが、ARM社では液体に微小金属粉末を分散させ(溶解しな いので、均一に分散させます)、ここに電気を貯めることで300Wh/Lを超える性能 を実現したようです。しかも、充放電120回繰り返しOK,60日間保存OKを、実 証されています。詳しい解説もホームページに出ていますよ

構想としては、再エネ発電コストの安い(日本の10分の1)アラブ諸国で充電し、タ ンカーで日本へ運び利用する。輸送コストを考えても原子力発電より安くなるそう です。電気自動車などモバイルへの利用も検討されていて、電気が無くなったら近 くのスーパーで液体を購入し、ウィンドウォッシャー液を入れるように注げば、ま た走れそうです。その前に、電気が空になった液体はちゃんと容器に入れて、スー パーのリサイクルコーナーで引き取ってもらって下さいね。イメージがどんどん膨 らんでいきます

ところで先日田舎のお婆ちゃんの様子を見に行きました。「お婆ちゃん、一人暮ら しで不自由してない?」「ああ、最近は腰と膝が痛くて、この広い畑も手を入れら れなくて、そこの狭い一角で大根やホウレン草育てて食べているよ。だけどさ、役 場の人が畑に、ぺロプス何とかっていう太陽電池を植えてくれてさ、元々ここは日 当たりがいいもんで、電気がいっぱい育ってさ。ほら、あそこのいっぱいあるペッ トボトルに電気がいっぱい出来てるよ。自動運転の車に、あの水を入れると、勝手 に病院まで連れてってくれるし。月に一回は農協の人が、水を買い取ってくれるん で、お金も困らない。全くありがたい事だわ!」「わっつ、お婆ちゃん最先端!」

なんてなりそうですね。アッツ、疲れているからって、この液体飲まないでくださ いね、オロナミンCではないのですから!
2024/2/14【チバニアンで地磁気反転を見る】(野島)
  先月千葉県市原市のチバニアンに再訪しましたので、その記事です。2020年に、 上記地層が、地球規模の変化の証拠と認められ、地質年代に千葉にちなみチバニア ン期という名称が付きました。正確には、新生代・第四紀・更新世・チバニアン期 です。77万年前に変化の区切りがあり、12万年前までの期間を指します

 前回訪問したのは2020年丁度コロナが始まったころで。簡単なパンフレットが箱 の中に置いてあっただけで、訪れている人もまばらで、地層を見ても良く分からな いで帰る始末。でも今回はプレハブですがビジターセンターがあり、ビデオと説明 員の方もおり、かなり理解しました。今後大規模な近代的センターが計画されてい るようです

 要約すると以下の3点のようです 1)房総半島の成り立ちです。ここはかつて深海だったそうですが、太平洋と相模 プレートがぶつかるところで、急激に隆起が起こり今の地形に成りました。海底で 堆積した地層が隆起したので、東側から西側に下がる地層があり、その範囲は千葉 県全域に渡るようです。そしてここは養老川の浸食により、何万年の地層の変化が 見れる場所の一つになったという事です

2)年代が明確な地層がある。77万年前に長野岐阜火山で大噴火があり、その堆積 物がはっきりと線になって見えます。噴火の年代は正確にわかるので、ここの地層 がいつ出来たのか証拠になります

3)その前後に地磁気逆転の地層がある。年代が分かる地層の下側(古い)から、 上側(新しい)にかけて、決定的変化があります。それが地磁気の方向です。77万 年前の地層からは、現在の北方向にコンパスの針が指すのと逆に、南側を指してい たのです。しかも、その間に地磁気が弱く不安定な時期が何千年と存在していたこ とを、この地層から証明できるのです

 特に印象に残ったのは、この地磁気が不安定な時期です。GPSが使えなくなるなど では済みません。太陽からはエネルギーの大きな粒子(放射線のような)が飛んで きますが、地磁気がこれをシールドして、地球は住みよい環境でいられます。無く なったら、まず電子機器は壊滅、生命も脅かされると考えられます。この地層には 海底生物の化石も多くありますので、その影響が今後明らかになっていくと思います

 チバニアン期から現在まで地磁気は北を向いていますが、現在でもその軸はふら ふら揺れています。いつかその揺れが大きくなり弱くなり、何十万年も先の話でし ょうが、逆転が起こるのでしょう。そう考えると、とても印象的な地層です

 説明員の情熱的な説明の後、「では、この後実際の地層を見てきてください、た だ、調査した穴が開いているだけですけどね!」は落ちでした、確かに!
2023/12/13【はかないエバネッセントな光】(野島)
   エバネッセント(EVANESCENT)「はかない、消えゆく、つかの間の」なんて情緒的 な言葉でしょう、でもロックグループの話ではないのです。「儚く消えゆく光」の お話です。今月はオプティカル(光学)製品の話題を書こうと思ったのですが、こ の言葉の響きに捕まってしまいました

  「エバネッセント光」と言って日本語では「近接場光」と呼ばれています。まず 光ですが電磁波なのです。スマホの電波の受信が悪いとか、電子レンジの中のマイ クロ波とかは、電磁波という波なんです、波長は1m弱位で、周波数は数GHzで す。でこの波長をどんどん小さくして行く(周波数をどんどん上げて行く)と、光 になります。波長は数百nm(ナノメータ=ミクロンの1000分の1)です

ところで海の波を考えます1mくらいですかね。陸に近づいて1mくらいの岩に ぶつかると、バシャーンと跳ね返ります。もっと近づいて浜辺の石ころ数センチに ぶつかりました、波はそのまま進んでしまいました。何を言いたいかというと、1 mの波には数センチの石ころが見えない(影響されない)のです。これを光学顕微 鏡のイメージに置き換えると、光を当てます、反射して何かあるのが観察できます、 観察出来るのは光の波長数百nm(0,1ミクロン)程度までという事になります、 これを「回折限界」と言います。こんな例も面白いです、板に数百nmの穴を開け て照らしたら、向う側が明るくなりました。数十nmの穴を開けたら、向う側から 光は見えませんでした

すみません、何の話かイライラするのわかります。もっと小さいものが光で見れ れば役に立ちますよね、それがエバネッセント(近接場)光の一つの役割なのです 近接場光のイメージを話します

ここに光ファイバーが一本あります、通信にも使います、中には光信号が飛び交 っています。光ファイバーの直径は、光の波長より十分大きいので、自由に伝わり ます、板に向けたら明るい光スポットが見えました。ここで先端を円錐状に絞り先 っぽを数十nmにしました、光スポットは見えなくなりました。でもよく見ると円 錐の先端だけほのかに明るいようです。ちょうど水滴が先っぽに溜まって今にも落 ちそうなように。これがエバネッセント光です、外に広がることが無く、はかない、 今にも消えゆく光です

この円錐形を水平に移動させます。数十nmの物体に当たりました、すると水滴 ・光は物体に染み込んで流れていきました。反対側から見てたら何かポツンと光っ たような気がします。そうなんです、小さな物体を観測できたんです、回折限界よ り小さいものが観測できたのです。今では、この技術でウイルスの存在を確認した り、様々に利用されています。ここまで我慢して読んでいただきありがとうござい ました。でもステキな現象と思いませんか?(私だけか!)

昔、FDTD法と言う電磁波を扱う計算で、光も計算し、確かにこのほのかな明 かりが見えたような気がします。それにしても無機質な物理の世界で、なんて情緒 的な名前を付けたのでしょう、「エバネッセント」とは!
2023/11/08【誘電加熱と誘導加熱】(野島)
   今月は、先月リリースしたμ-EXCEL(簡単・速い初期判定用 熱・電磁場解析ソフ ト)の交流電界版に関連したお話で、誘電加熱と誘導加熱という身近な加熱方式につ いてです

  まずは誘導加熱、IH調理器のことです。調理台の五徳の下には、コイルがあり そこに交流電流を流すと、交流磁場が発生します。磁場はお鍋の底にあたり、電磁 誘導の原理で、お鍋に電流が流れます。この電流でお鍋が発熱し、お湯を沸かしま す。磁場を発生させて加熱させてるのがポイントで、局所的に素早く加熱すること が出来ますね

次が誘電加熱です、これも身近なのです。以前、整形外科に行ったら、何人かの 患者さんがパット見たいのを患部に当てて、じっと座ってました。あの電気治療が そうだと思います。パットは電極で、患部を挟む様に貼り、電気をプラスマイナス に振ると電極間に交流電流が流れます。この電流により患部はほんのり温められ、 血行が良くなり、治癒が促進されるというわけです。このポイントは電場で電流を 発生させていることですね

ところで少し難しい話になるのですが。金属なら電気を通すので、電流が流れる のは当たり前ですが、プラスチックや陶器などは電気を通さないので、電流は流れ ない=温かくならない?でしょうか。実は交流電場を与えた場合は温かくなります 電気を通さない絶縁体のことを誘電体と呼びます(磁気を通すのは磁性体です) 誘電体に交流電場を与えると、中の電荷(自由には動けないけど)が振動し、見か け上電流が流れたように振舞うのです。なぜこんな話をしたかというと、生体も 誘電体の一種です、水分が多いので電気を通す性質は有りますが、例えば皮膚が乾 いていたら、交流電場なら電流が流れて、患部を温めます

誘電加熱は医療だけでなく、プラスチックを加熱したり木材を加熱乾燥させたり でも利用されています。実は電子レンジのチンも、誘電加熱の延長上の原理で、食 品を加熱しています。さらに医療ではハイパーサーミアという癌細胞を狙い撃ちし て加熱する治療法も効果的に使われているようです

今回リリースしたμ-EXCEL交流電界版は、発熱分布と電流分布を求めるまでです が、いずれ誘電加熱版を開発し、様々な誘電体の温度分布まで求めようと考えてい ます。ご興味あれば、是非お問い合わせください

2023/10/09【ペロブスカイトとカルコパイライト?】(野島)
   今月のタイトルを見てピンと来る方は、その道の専門家でしょうか?私には全く 分かりませんでした。これはPVのお話です。ん?さらにさっぱりわかりません!

  すみません、ワザと専門言葉を並べました。今日は太陽電池のお話です。PVは Photovoltaric(フォトボルタイク)で太陽電池の事です。ここから、今月のタイト ルのお話をしていきますが。毎度にわか勉強で、間違っていたらご容赦頂き、ご 自分で確認してください

弊社の入居している「さがみはら産業創造センタSIC」では、毎月入居企業の紹 介チラシが配布されます。9月号にPXP社が紹介され、次世代PVの開発・量産化に取 り組んでいると興味深い内容でした。何が新しいかというと、「軽い・曲がる・割 れない」ソーラーパネルで、様々な場面で利用できる、と注目を集めています。日 本で唯一量産化を目指しているそうで、すごい会社が入居しています

さて、ソーラーパネルと云えば、四角いガラスのパネルが頑丈に屋根に設置され ているイメージですが、あれがシリコン系PVです。良く普及して将来のクリーンエ ネルギーの代表格と思います。ただ、厚いガラスで重そうで、我が家の古家で屋根 が持つか心配で、様子見をしています

そこで出て来たのが、化合物系PVです。CIGSと云うキーワードも注目ください。 CIGSは化合物の頭文字でC(Cu銅)I(Inインジウム)G(ガリウム)S(Seセレン) これらが結晶構造をなしていて、太陽光の吸収効率が非常に大きいのです。なので 薄い層でも発電効率が良く、薄いので軽くて曲げられる、耐久性も良く、製造方法 も印刷式などでも出来低コストと、注目を集め現在世界中で研究され量産化に努力 されています。今年、岸田首相が2025年に実用化を目指すと宣言されました

で、その結晶構造は天然に存在する黄銅鉱と同じで、その石の名称がカルコパイ ライト(Chalcopyrite)なので、カルコパイライト系太陽電池となるわけです。さら に最近、灰チタン石の結晶構造系でさらに変換効率が高いものが発見され、その名 前がペロブスカイト結晶構造なのです。この2系列は、光の吸収帯域が異なるようで カルコは赤外域、ペロブスは可視光域に強く、この2つを重ねるタンデム構造で、発 電効率をシリコン系に迫る(追い越す?)を目指しているそうです

そうなれば、軽くて曲がるのでEVのボディ表面全面に設置して発電させることも 可能です。そうそう、放射線にも強いようで宇宙船向けにも期待されているとのこ とです。ビルの壁面にも、飛行機の翼にも、船の甲板にも、衣類にも、そして我が 家の屋根にも、どこに設置しましょう?ワクワクします 「この冬のユニクロは、脱動物由来ダウンからの開放、PVフリースで快適なライ フスタイルを」なんてなるのではないでしょうか

さてPXP社では、世界初の製造法を開発し、2023年今パイロット量産化に進んで いるようです。皆様、是非一度検索してみてください (https://pxpco.jp/)