解析事例集(2)リングモデル 電圧源(鋼材の違い)

目次
  1. 解析モデルと目的
  2. 解析条件と計算時間
  3. 磁場分布、鉄損分布結果
  4. X方向ヒステリシスカーブ結果
  5. Y方向ヒステリシスカーブ結果
  6. 電流波形結果
1.解析モデルと目的

解析事例1で使用したリング試料の解析モデル(Fig2.1.1、Fig2.1.2)を使用して、鋼材の違いによる変化を確認する。鋼材は無方向性電磁鋼板で、50A470と35H440とする。励磁コイルに電圧を入力し、最大磁束密度が1.6T程度になるように励磁。電磁鋼板の圧延方向はX方向としている。鋼材の板厚さが異なるので、積層枚数を変えて積厚さを同じにして、コイルの電圧条件等は同じものにした。

モデル図

Fig.2.1.1 モデル図

メッシュモデル

Fig.2.1.2 メッシュモデル

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2.解析条件と計算時間

解析条件をFig.2.2.1に示す。鋼材の厚さが異なるため、積層枚数を変え積厚さを同一にした、従って同一の電圧条件を設定した。計算時間は約11~14min(IntelCorei5,28GHzマシン)、非線形のイタレーションが300~400回で収束した。

解析条件

Fig.2.2.1 解析条件

計算時間と収束回数

Fig.2.2.2 計算時間と収束回数

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3.磁場分布、鉄損分布結果

最大磁束密度分布、最大磁界強度分布、鉄損分布をFig2.3.1、Fig2.3.2、Fig2.3.3に示す。磁束密度は35H440の方が大きい。磁界強度は35H440の方が小さい。鉄損分布は、両者がほぼ同じ分布と大きさで、総鉄損量は50A470が3%程度大きくなった。

Fig.2.3.1 最大磁束密度分布(最大1.41Tで表示) 左:50H470 右:35H440

Fig.2.3.2 最大磁界強度分布(最大167A/mで表示) 左:50H470 右:35H440

Fig.2.3.3 鉄損分布(最大1.7W/kgで表示)
総鉄損値は左:50A470 5.492(W) 右:35H440 5.338(W)

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4.X方向ヒステリシスカーブ結果

Fig2.4.1は左側が50A470、右側が35H440。上段がX方向ヒステリシスループの分布(正規化有り)で、その中の青丸の拡大図が中段、赤丸の拡大図が下段である。下段にはDBカーブも右下に示した。

X方向ヒステリシスカーブ

Fig.2.4.1 X方向ヒステリシスカーブ

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5.Y方向ヒステリシスカーブ結果

Y方向ヒステリシスカーブ

Fig.2.5.1 Y方向ヒステリシスカーブ

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6.電流波形結果

電流波形の比較を行う。前章Fig2.5.1のDBヒスカーブを見ると、35H440は50A470に比べて立ち上がり具合が大きい、これは若干透磁率が大きい材質である事を示している。その結果、前章Fig2.3.1のように、同じ励磁条件でも磁束密度が大きくなっている。電流波形の比較では35H440の方が磁束密度が大きい事により誘起電圧が大きくなり、電流波形ピーク値が下がったものと考えられる。さらに磁気飽和の影響を受けて電流波形が50A470より尖った形になっている。

電流波形

Fig.2.6.1 電流波形

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